AMEXセンチュリオンより欲しかったもの

AMEX centurion

昔、私はアメリカン・エキスプレス・プラチナカードを持っていた。

当時はブラックカードへの憧れもあった。

今でこそ笑って話せるが、若い頃の私は本気でセンチュリオンに興味を持っていたのである。


ある日、センチュリオンホルダーの先輩と食事をする機会があった。

私は率直に聞いた。

「どうしたら私も先輩のようにセンチュリオンを持てますか?」

今思えば、少し青臭い質問だったかもしれない。


先輩は少し考えてからこう答えた。

「君の場合はどうしたらいいのかは、俺には分からないな。」

そして続けた。

「でも俺は本業じゃなくて、株で稼いだ金をかなり使ったよ。」


夕飯を食べるためだけに札幌へ飛ぶ。

寿司を食べる。

その後はすすきので豪遊する。

高級ホテルに泊まる。

親しくしている女性に高級ブランド品を贈る。

そういう使い方を意識的に続けたという。


なるほどと思った。

確かに魅力的な世界だった。

若い頃の私も、その話を聞きながら少し胸が高鳴った。

センチュリオンというカードの向こう側には、そういう世界が広がっているのかもしれない。


しかし不思議なことに、話を聞き終わったあと、私の心の中で何かが冷めていく気がした。


先輩を否定する気持ちは全くなかった。

実際にその先輩は成功していたし、人生を楽しんでいた。

だからそれは間違いなく一つの正解だったのだと思う。


ただ、それは私の正解ではなかった。


私は札幌へ行くなら、寿司だけではなく街も見たい。

ホテルに泊まるなら、誰かに見せるためではなく、自分の時間を楽しみたい。

誰かに高価なプレゼントを贈るより、家族と過ごす時間に使いたい。


そう考えたとき、私は初めて気づいた。


欲しかったのはセンチュリオンではなかった。


本当に欲しかったのは、

自分が納得できる人生の使い方

だったのだ。


その後しばらくして、私はアメックス・プラチナを手放した。

年会費が理由ではない。

サービスへの不満でもない。


ただ、センチュリオンを目指す理由が自分の中から消えてしまったのである。


今振り返れば、あの日の先輩との会話は、ブラックカードを目指す人生の終わりであり、

自分自身の価値観を探し始める人生の始まりだったのかもしれない。


結論として

センチュリオンは魅力的なカードだと本当に思う。

持てるなら持ってみたい気持ちも今でも少しある。

しかし、もう昔のような憧れ方はしない。


なぜなら今の私は、カードのランクよりも、

そのカードの向こう側に、どんな人生があるのか

の方に興味があるからだ。

 

 

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