クレジットカードの世界は、静かに変わり始めているようだ。
近年、プレミアムカード各社は年会費を引き上げる一方で、利用条件を設けるサービスが増えてきた。
今回のアメリカン・エキスプレス・プラチナ・カードの改定も、その流れの延長線上にあると思われる。
年間500万円の壁
年間500万円以上の利用で特典を拡充するという方針を打ち出した。
一見すると「改悪」と受け止める人もいるだろう。
しかし私は、この変更を別の角度から見ている。
それは、
ステータスカードの時代が終わり、『決済額』の時代が始まった・・・・ということだ。
かつてステータスカードとは、「持っていること」に価値があった。
財布から取り出した瞬間に感じる所有感。
そして、カードを差し出すときの高揚感。
ブラックカードやプラチナカードは、一種の憧れでもあった。
しかし、カード会社にとって重要なのは、実はカードを持っている人ではない。
そう、カードを使っている人である。
カード会社の収益の多くは、加盟店から支払われる決済手数料によって成り立っている。
年会費ももちろん収益ではあるが、毎月何十万円、何百万円という決済を継続する会員の価値とは比べものにならない。
つまりカード会社が本当に大切にしたい顧客は、
「高い年会費を払う人」
ではなく、
「多く決済してくれる人」
なのである。
カードは「コレクション」ではなく、「道具」
私は以前から、カードはコレクションではなく「道具」だと考えてきた。
その人のライフスタイルを豊かにするための道具であり、人生を少し便利にしてくれる相棒でもある。
だからこそ、カード会社が利用実績を重視する流れ自体は理解できる。
企業としては極めて合理的な判断だからだ。
しかし一方で、少し寂しさも感じる。
長くカードを育ててきた会員ステータス。
ブランドへの愛着を持ち続けてきた会員ステータス。
そうした「時間」を評価する文化が、少しずつ薄れているようにも映る。
私が現在メインで利用しているのは、JCB THE CLASSとダイナースプレミアムである。
両カードにも様々な条件や制度はある。
それでも、長年付き合うことで築かれる信頼関係のようなものを、私はまだ感じている。
カードとは、本来そういう存在ではなかっただろうか。
毎年利用額だけで評価される関係ではなく、人生の節目を共に過ごし、家族旅行も、ホテルも、レストランも、その一枚と共に記憶を積み重ねていく。
そんな存在であってほしいと思う。
もちろん、高額利用者を優遇すること自体を否定するつもりはない。
それは企業として自然な戦略である。
しかし私は、カードに残っていてほしい価値がもう一つあると思っている。
それは、
「この一枚を長く持ち続けてきてよかった。」
そう思わせてくれる体験だ。
決済額だけでは測れない価値
時間が育てる価値
ブランドへの信頼
それらが失われたとき、カードは単なる決済ツールになってしまう。
カード会社は、これからも利用額を重視するだろう。
AIが利用履歴を分析し、一人ひとりに最適な特典を提供する時代も遠くない。
だからこそ私たち利用者も、「どのカードが一番ステータスが高いか」ではなく、
「どのカードが自分の人生に寄り添ってくれるか」
という視点で選ぶ時代になったのだと思う。
ステータスカードの時代は終わったのかもしれない。
しかし、本当に終わらせてはいけないものがある。
それは、カード会社と会員の間に積み重ねられる信頼という、目には見えない資産なのである。
カードの価値は、利用額では決まらない。
その一枚と、どれだけ豊かな時間を過ごしてきたかで決まるのだと信じる。
“カードは、人生の主役ではない。
しかし、その一枚が人生を豊かに彩る名脇役になることはある。”
by drak

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